納経

 この秋、薬師寺展が地元の博物館で開催されたおり、薬師寺の白鳳伽藍改修費用を写経で賄っていることを知り、その折寄進して手に入れた写経セットをそのまましまっていたが、最近私を筆頭に病が重なり、最後まで元気だった婿さんまでが入院するにおよんで早速写経し、納経しようと準備して、連れ合いの写経が出来上がるのを待っていた外出ばかりでが中々進まない。
 しびれを切らし、11月15日・・・思い立ったが吉日と一人で薬師寺を訪ねる事とし、新幹線・奈良線を経由して奈良に向かった。苦しい時の仏頼みと揶揄されるかも知れないが、不幸が続くと何かしないと落ち着かない。「お薬師様は病気を治してくださる仏様」と聞けばなおさらである。下調べもそこそこに出てきたため、時刻表を頼りに薬師寺を見ていたら近くにかって労演でみた天平の甍・鑑真和尚の唐招提寺が眼に入った。この2寺だけでも良い積りでJR奈良駅から法隆寺方面に向かうバス停を探した。バスの乗車券を求めた時「他は回られませんか?」とか耳にしたがとりあえずは薬師寺に行くことだけが我が脳を占拠し・・・頭が回らなかった。後で考えたら多分1日乗車券の類があったのかな?
 何せ久し振りの奈良でバスに乗ったら薬師寺前のバス停が気になって・・・風景も余り脳裏を刺激しなかった。時刻表によれば唐招提寺薬師寺の順に停車するようである。
 席が空いたので運転手と話せる位置に席を移し、行き方を訪ねた。「薬師寺へ行かれるなら駐車場まで行かれた方が。」との助言を得てそれに従うこととした。五重塔とでかいクレーン車がバスの窓から目に入ったのでおおよその位置は確認でき、ほっとした。
 駐車場から南門・中門を経て金堂に向かった。受付で写経を納めに来たむねを告げると「ここでもお預かり出来ますが、金堂までお持ちになったほうが。」との助言を得てここ迄来たのだが、堂内のいずれを探しても写経の受付らしき場所は見当たらず・・・売店で聞くとここでお預かりし寺に届けるとか?・・・「それなら門外でも良かったのでは?」と少々心外だった。
 そこで、再び寄進してもう2セットを手に入れ、婿殿の健康長寿のお守りを手に入れた。あとは各建物を見て回った。バス停への順路を聞き出し更に奥の建物へ。
 「唐招提寺へ行かれるならそのまま北へとられたらバス停に行くより近いよ。」と聞かされ安心して各所を巡ることが出来た。薬師寺の全体像を見て一路唐招提寺へ・・・昼も過ぎていたので十割そばの店を覘いたら千客万来・・・時間が掛かりそうなので次へ歩をすすめた。田舎道で
しゃれた店もなく道すがらの食堂で昼食を済ませ目的地へ。時節柄修学旅行の生徒がやたらと眼に入った。唐招提寺の門をくぐると見慣れた甍の建物が大きく浮かび上がった。