記憶力

 年をとると物忘れが激しくなることは想定していた。元来暗記力には自信が無く、歴史で年号と事件を覚えることは大嫌いで、不得意な科目の第一であった。否不得意科目は全部かな?
 NHKの大河ドラマは歴史物が多いがドラマとして見ていて・・・途中時代のことを聞かれると腹が立ってくる。時々見ていて流れから総てを想定するなんて芸当は記憶力・創造力に長けていない私には到底できない。
 現役時代に定年になったら読むんだと云って買い漁った本も、速読に長けていない私には中々読み進めず、年のせいか読んだ後から忘れてゆく毎日が続いている。
 先ほどの歴史について、強烈に記憶に残っていることがある。あれは高校時代の世界史であった。板書が得意なT先生で授業が始まるや否や黒板の右端から「書はかくは」寸分の隙間も無い。しかもストーリーを口にしながら。とにかく書き写さなければと下を向いてひたすら書き留めていると、「おい聴いているか?」と来た。「俺は書いているんだと明後日の方を見ている。」つまり、講義は我関せずで書くことすら遅れていると。
 先生に魅せられて一生懸命憶えたつもりだったが・・・今思い出すと「ゲルマン民族の大移動」と言う言葉ぐらいしか憶えていない。
 75歳を越えると、免許証更新時に認知症検定の為の簡単なテストが課せられる。その中に
記憶力のテストが組み込まれている。記憶力の苦手な私にはシンドイテストである。
 4コマずつ3回の絵がスライドに写され、物の名前とグループ分け(例えばチョウ・動物)が示される・・・「チョウは動物ではなく昆虫だよ」と指摘したら云ったとおりに憶えればいいんだと。
 間に他の質問を挟んで前に出た絵の名前を思い出させる問題である。
 大1問は名前を問われる。・・・・制限時間以内に書き込んで行く。その後先ほどの分類区分が示されその物を記入する問題へと続く。これが前後逆だったらと思うのだが・・・何か法則が有るのだろう。
 記憶力には自信のない私が、どう云う訳かかなりの回答率で普通整数になる総合点がマイナス2.7・・・と優秀な成績であった。「まんざら捨てたものでもないな。」