むら役解除後の日課

 終活を始めた矢先再び自治会の役員を押し付けられて2年、ようやく役職の選出方法の確立と2名の人選を経てこの4月無罪放免となった。
 エアコンの設置工事から外壁の塗装まで公民館の仕事も会計さんの協力を得て無事済ませることが出来た。ただ、先人が積み立ててきた経費を削減したままその後の原価償却の手立てを講じられなかったことが気がかりではある。
 さて、これから何をするか?・・・。現役時代に定年後に読むんだといって買い続けた本を読まなければとも思うのだが中々手がつかない。年賀で・・・「また一人旅でも始めますか?」と宣言した旅も・・・青春18キップでは疲れるだろうと手が出ない。
 幸か不幸か23年末に奈良の薬師寺へ納経の旅に出たとき、西国33番札所めぐりのパンフを眼にし、前から興味もあったので是を始めて見ようと思いたち、24年頭書から興福寺清水寺を手始めに下調べを開始した。旅はジパングを使い先ずは1・2番札所を目指すことに。
 車窓から走り去る景色を眺めながら・・・は一つの楽しみでもあるが、変化がない時は読み物をと思い漱石の「こころ」を携えて紀勢線に乗り込んだ。
 指定席には私一人何に気を使うこともなく思い通りの旅が始まった。何でも「連休前の平日は旅人が少なくゆっくり旅が出来る。」とはタクシー運転手の話、連休にシフトしてこの時期の旅はしないらしい。
 那智山青岸渡寺は長子の結婚が決まったとき一家で旅行したことが有り2度目の訪問である。大分前の事とておぼろげには覚えているが・・・・。時間表を繰っていたら那智勝浦からバスがあるらしい。ただ2番札所に行くには時間が合わない。やっぱりタクシーか?
 現地で乗り捨てると帰りのタクシーが無いようなので観光タクシー並みの車賃でしぶしぶOKを。それにしても7000はチョッと高いのでは?オマケにお寺までの通行料もせしめられた。
 現地では記憶がよみがえった。お寺と那智大社が隣り合わせで、遠く那智の滝が見下ろせる。殆どとんぼ返りで勝浦には30分も前に着いてしまった。「もう少しサービスしてもいいのでは?」と運ちゃんには云って見たものの後の祭りである。「参拝の時間が限られているので早めに行かれた方が良い。」とは運ちゃんの忠告、是と言った店もないし弁当を買い込んで1時過ぎの特急に乗車・・・一路和歌山に向かった。この区間の乗車は初めてである。途中海岸線の景色は最高であったが、車両が揺れるので写真に残すことは出来なかった。
 自由席は2両で、それほど混んで居なかったので読書もかなり捗った。私が考えて居た読書と旅が一度に進んだことに満足しつつ・・・途中「海南」で下車・ドンコウに乗り換え三井寺に向かった。右手、山の中腹に大きな寺社を見つけ想像はついたが運ちゃんの忠告を思い出しタクシーを利用。「長い石段が続くが大丈夫?」と聴かれ躊躇したが、勝浦では楽を決め込んだので今度は歩くこととし正門に着けてもらった。女人・厄年・還暦・等と名づけられた階段を手すりを利用しながら一段・一段力をこめて登上・・・76歳の限界に挑戦しやっと本堂へ。・・・やっぱり片づけが始まっていた。ささやかな祈りをささげた後御朱印を戴き帰路に。階段は上りよりすうだん楽だった。来る時開いていた門前の売店はもうしまっていた。